「お、相棒! こんなところに一人で何してんだ?」
 
 
 「2回目」の地下坑道。
 あの時と同じように、アフィンくんが声をかけてくる。
 
 正直、はっきりした手掛かりはつかめないままこの日になってしまった。
 けど、いちかばちかで来てみることにしたのだった。
 今度は「前」とは別の場所を探せたらいいんだけど。
 
 
「ちょっと、探し物に来たの。えっと、アフィンくん、もしよかったら、一緒に行かない?」
 
「お、いいぜー。ここで会ったのも何かの縁だしな!
それで、何を探すんだ?」
 
 
 アタシは「前」と同じように武器の破片を探していることをアフィンくんに話す。
 アフィンくんは「前」と同じように、とりあえず考えることは置いておいて探しに行くことを提案してくれた。
 アフィンくんがいると元気出てくるなあ。
 
 アタシはアフィンくんと地下坑道を歩き回りながら、念入りに周囲を見ていく。
 あの文字の読み方の手掛かりとかないだろうかと。
 
 しかし、結局なんにもわからないまま、前に見つけた記号のところまで来てしまった。
 
 
「……やっぱり読めないわ」
 
「相棒、さっきっから壁とか気にしてたよな」
 
「うん、文字読めないかなって思ってたんだけど……」
 
 
 どうしよう、このままじゃなんにも変わんない。
 ちらりと横を見る。「前」と同じように、一方の道には瓦礫の山があった。
 あそこも通れそうにないなあ……
 
 
「あれ、そこにいるのはシャルさん?」
 
「む……あ、フーリエちゃん」
 
 
 声をかけられて振り向くと、そこには2匹のリリーパ族を連れたフーリエちゃんがいた。
 
 
「あ、リリーパ族と交流してるっていうフーリエさん。
今日もリリーパ族と交流中か?」
 
「はい。こんなところでお会いするなんて思いませんでした。
何かお困りのようでしたが……」
 
「あ、ねえ、フーリエちゃん! この文字わかんない?」
 
 
 アタシはフーリエちゃんに壁の文字を指さして見せる。
 フーリエちゃんは最近このあたりによく来ているはずだから、この文字のことも知ってるかもしれない。
 フーリエちゃんは壁に近づき、文字をまじまじと観察する。
 
 
「これ、象形文字ですか……? この子たちが遊びで描く文字に似ている気がしますが……」
 
「む、リリーパ族って文字描けるの?」
 
「文字として使っているのかどうかはわかりませんが……あれ?」
 
 
 リリーパ族の一匹がフーリエちゃんをつつく。
 フーリエちゃんは屈み、なにかジェスチャーで訴えかけているリリーパ族の顔を覗き込む。
 
 
「もしかして、あなたたち、この文字読めるの?」
 
「え、マジかよ」
 
「こっちだ、って言ってるみたいです。なにかあるんでしょうか。
……あっ、待ってください! 私も行きますからー!」
 
 
 リリーパ族は瓦礫のほうに走っていく。
 フーリエちゃんはそれを慌てて追いかけた。
 
 
「……行っちゃった。振り回されてんな、あの人」
 
「でも、仲良くしてるみたいでよかったわー」
 
「それは、まあなあ。でも、おれたちはどうするんだよ、相棒」
 
 
 リリーパ族は「前」と同じように瓦礫の下に潜り込んでいってしまう。
 フーリエちゃんもさすがにそこで足止めのようで、慌てふためいている。
 
 
「リリーパ族を追っかけるにしても、あんな狭いところは入れないぞ……」
 
「う、うぅ……でも、あっちの道は……」
 
 
 どうしようと思ったその時、後ろで大きな爆発音が響いた。
 なにごと!? と振り返ると、あの瓦礫の山がなくなっていた。
 
 
「え、ええっ!? あんた、なにやってんだよっ!?」
 
「発破です!」
 
「そうじゃねえよ!! んなの見たらわかるっての!!」
 
「あ、その手があったかあ……」
 
「相棒ッここ感心するところじゃねえ!!
じゃなくて、フーリエさんはなんでんなことしてるんだよー!?」
 
「だって、こうしないと通れないじゃないですか。ほら、もう通れますよ」
 
「本当だわ、ありがとうなのフーリエさん!」
 
「だからぁ!!」
 
 
 アフィンくんはなぜかアタシの肩をつかんでがくがくとゆすってくる。
 なんでアタシはアフィンくんに怒られてるのかしら。
 
 
「あ、あの子たちが行っちゃう! 待ってよー!」
 
「って、ちょぉっ……」
 
 
 アフィンくんの制止も聞かず、フーリエちゃんはリリーパ族を追って走っていく。
 アフィンくんははあ、とため息をつく。
 
 
「なんていうか、活動的だな……相棒、どうする? おれ考えるの疲れた……」
 
「もちろん、追いかけるわ! ……アフィンくん、ここで休んでる?」
 
「いやそこまででは。おれも行くよ……なんか心配になってきた」
 
「……ほんとにだいじょぶー?」
 
 
 アタシたちはフーリエちゃんを追いかける。
 フーリエちゃんはリリーパ族に追いついていて、話を聞いているようだった。
 
 
「フーリエさん、また話し中か?」
 
「ええと、この子たち、案内してくれるみたいです。こっちだって……
シャルさん、わたしもついていっていいですか?」
 
「む、それは助かるの! アタシはリリーパ族の言葉はわかんないし……フーリエちゃんに教えてもらわなきゃ」
 
「はい、それは任せてください! ……わたしも全部わかるわけではありませんが」
 
 
 フーリエちゃんは苦笑する。
 
 
「おれにはあのモフモフのいってること全然わかんねーけど、フーリエさんはわりとわかってるみたいに見えるなあ」
 
「いえ、わたしもわかるのはほんの少しです。
ただ、いわんとしている感情が、ちょっとずつわかるようになっただけ」
 
 
 そういうフーリエちゃんだけど、どこかうれしそうだ。
 気持ちが伝わって、わかるって、すごくうれしいことなんだ。
 
 
「それに、道案内なら方向がわかれば十分だと思いますし……あの子たちの気が変わらないうちに、目的地に着いちゃいましょう」
 
「うん、ちょっと急ぎ足ね! あ、リリーパ族がなにかお話ししてくれたらアタシにも教えて!」
 
「相棒ー、急ぐんじゃないのか?」
 
 
 
 
 リリーパ族を追いかけ、フーリエちゃんが話を聞きつつ、地下坑道を進む。
 リリーパ族は戦闘はできないようなので、エネミーが現れたらかばって戦わないといけない。
 それでも3人なのでいくらか戦いやすい。ひとりだったらちょっと大変だったかも。
 
 しばらく歩いていくと、瓦礫の山が見えた。さっき道をふさいでいたものよりも大量の瓦礫だ。
 リリーパ族はなんだかはしゃぐように、こちらに手を振る。
 
 
「あれはアタシもわかる! うれしそうだわ」
 
「あそこに見せたいものがあるみたいですね、行ってみ……わっ!?」
 
 
 いきなり、振動。上からぱらぱらとほこりが降ってきた。
 リリーパ族が慌ててこちらに逃げてくる。
 
 
「相棒、上っ!」
 
「え!? ……はわっ!」
 
 
 天井に大きな穴が開き、そこから巨大な機甲種――トランマイザーが落ちてくる。
 巨大な爪を持つその機甲種は駆動音を鳴らし、こちらを向いた。
 フーリエさんが逃げてきたリリーパ族を後ろに隠す。
 
 
「りり、りりり! りりりー!」
 
「奥、守る、機械? あれはさしずめ守護者といったところですか……。
なら、無理に奥に行かなければ襲ってこないのかもしれませんが……そうもいきませんよね」
 
「うん、この先に行かないといけない気がする! それに、せっかくリリーパ族が探し物見つけてくれたんだもん。ここで帰るなんて、しつれーだわ!」
 
「なら、微力ですがわたしにも協力させてください。シャルさんには今までいっぱいお世話になりましたから!」
 
 
 フーリエちゃんはそう言ってランチャーを構える。
 
 
「わかった、ありがとうフーリエちゃん。じゃあ、やっちゃうわよ!」
 
 
 アタシはガンスラッシュを取り出すと、トランマイザーに向かって駆けだした。
 トランマイザーはこちらに気付くと、アームをおおきく振り回してくる。
 アタシは後ろに飛びのいてそれをかわす。
 
 てっきり銃撃攻撃してくるかと思ったけど、そうでもなさそうだ。
 だとしたら、近接も有利とは限らなさそうだ。
 
 
「遠くからのほうが攻撃避けやすいからマシなんじゃないか、相棒っ」
 
「でも弱点がみあたらないし!」
 
「機甲種は装甲が硬いですしね……って、うわわ! こっちに来ました!」
 
 
 トランマイザーが高速でこちらに接近してくる。
 アタシたち(リリーパ族含む)は慌てて駆けだした。
 
 
「だーっ、近づかれる前に攻撃するしかねえ! 距離取るぞ距離!」
 
「なんとかして動きを止めないと!」
 
「えっと、なら、これ効くかしらっ!? 2人とも、視線そらして!」
 
 
 アタシは持ってきていた閃光弾の安全ピンを外すと、トランマイザーの目の前に投げた。
 閃光弾がトランマイザーの目の前の床に着弾し、まばゆい閃光を放った。
 直後、トランマイザーが動きを止める。
 
 
「スタングレネードですね! これなら……!」
 
「今のうちに撃つぞ!」
 
 
 アタシたちはそれぞれの武器を構え、トランマイザーに向かって一斉に射撃を放つ。
 しかし、硬い装甲に傷をつけるのが精いっぱいだ。
 何か決定打は……
 
 急に、トランマイザーが再び動き出した。
 腕とかのパーツがさっきとは違う位置、方向に移動していく。
 
 
「え、なんか変形してないか……?」
 
「りっ、りりり!」
 
「え、危険!? お二人とも、警戒を……!」
 
 
 トランマイザーの形が大きな車のような形になっていく。
 横のミサイルポッドがこちらに向いた。
 
 
「……あれ距離取ってどうにかなると思う?」
 
「知るか!」
 
「と、とにかく、避けま……わぁっ、来ちゃう!?」
 
 
 大量のミサイルがこちらに飛んでくる。
 アタシたちはバラバラに逃げ、トランマイザーから距離を取る。
 壁際まで走るが、その手前にミサイルが着弾する。
 このミサイル連射されたら困るんだけどっ!
 
 しかし、トランマイザーはそこでまた動きを止める。
 何か、青い光がちらちらと見える。あれ、もしかして機甲種のコア?
 アタシはライフルを構える。
 
 
「っ、チャンスだ!」
 
「わかってる、の!」
 
 
 弾にフォトンを込める。狙いはあのコア、外したらまた状況が厳しくなる。
 照準を合わせ、銃にフォトンを込める。
 絶対、当てないと。絶対当たるくらい、大きい弾丸を撃てばいい!
 
 
「そぉ、れぇーーーーーーっ!」
 
 
 銃口から放たれる、巨大なフォトンの弾。
 まっすぐに、トランマイザーに向かっていく。
 フォトンの弾はそのまま装甲とコアを貫いた。
 細かな装甲が吹き飛び、トランマイザーが崩れ落ちる。
 
 
「やったぜ、相棒!」
 
「う、うまく当たってよかったぁ……」
 
「さすがです、シャルさん! ……あれ、あの子たちは?」
 
 
 フーリエちゃんがリリーパ族がいたところを見るが、リリーパ族の姿はなかった。
 きょろきょろとあたりを見回すと、奥の瓦礫の前に集まっていた。
 
 
「あ、いたいた。どうしたのかしら?」
 
「瓦礫の中を示してるみたいだ……つっても、潜り込む隙間すらなさそうなんだけど」
 
「じゃあ私の出番ですね!」
 
 
 フーリエちゃんが発破を持って瓦礫に駆け寄り、設置を始める。
 わ、手早い。さすがだ。
 アフィンくんはそれを見て慌てる。
 
 
「ちょ、まだ何も言ってねえって! 待って、何でもう発破の準備終わってるんだ!?」
 
「私、自分にできることは精いっぱい頑張るって決めたので!」
 
「実直なキャストらしい意見だけど、絶対に頑張る方向を間違ってるからな!」
 
「あ、アフィンくん。たぶんそろそろ口閉じたほうがいい……」
 
 
 アフィンくんに声をかけようとしたところで、発破が爆破して瓦礫が吹き飛んだ。
 砂煙が舞う。
 
 
「わ、ぺ、ぺっ! 口に砂入ったー……」
 
「……アタシも口閉じ損ねちゃったー」
 
「うん、爆破崩落規模、想定内っと。これできれいになりました!」
 
「そ、それもそうね。さて、何が……あ」
 
 
 巨大な瓦礫があった場所、小さな瓦礫の山の中。
 そこから、きらりと光が反射してるのが見えた。
 
 アタシはそれに駆け寄り、瓦礫からそれを掘り出す。
 白くて細長い、武器の破片らしきもの……
 
 
「なんだこれ……武器? これが相棒の探し物か?」
 
「うん、アタシの想像通りなら、そうだと思うわ」
 
「きれい……これが私たち、ううん、シャルさんに見せたかったものなの?」
 
 
 フーリエちゃんがリリーパ族たちに尋ねる。
 リリーパ族は嬉しそうに何か鳴いた。
 
 
「しかし、リリーパ族はなんでこれのありかを知ってたんだ?」
 
「うん、アタシがこれ探してるなんて、教えたことなかったと思うんだけどな」
 
「ええと……大事、モノ、預ける? すみません、詳細まではちょっと」
 
「ま、そうだよな。むしろここまで案内してくれただけで十分すぎるって感じだ」
 
「ありがとうなの! なでなで〜!」
 
 
 アタシはすぐ近くにいたリリーパ族をなでる。
 毛並み、もふもふふかふかで気持ちがいい。
 
 
「何はともあれ、相棒の探し物が見つかったものには違いないからな。これで良しとしようぜ!」
 
「うん! ……えへへ、アフィンくんとフーリエちゃんもありがとう!」
 
「いえ、私もいい経験ができました」
 
「おれも相棒の手伝いできてよかったよ!」
 
 
 また一つ見つかった、武器の破片。
 これが何なのか、まだわからないけど、確実に、前に進んでいる気がした。
 
 
 
 
 
 
 
 
  あとがき
 地下坑道編。
 戦闘描写嫌いは定期的に言ってますが、トランマイザー余計に面倒〜〜〜〜!形態コロコロ変わるし、あとレアエネだと行動パターン変わるしレアエネミーのほうが行動ハデで描きがいがあるんですが。行動パターンは多いほうが書きやすい。あと味方側に射撃職しかいなくてさらに悩む。つれぇ。
 ただやっぱ人数多いほうがにぎやかに書けて楽しいですね。
 

 



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