ジグさんに、惑星リリーパで見つけた武器の破片を渡してきたアタシ。
 ジグさんはまた大喜び。どうやらあれは武器の先端部分らしいとのことだった。
 
 そして、足りないパーツはあと一つ……
 
 
 
 
「……ふざけるなよ、テメェ!」
 
 
 ジグさんに武器の破片を渡した後にショップエリアを歩いていたら、いきなりゼノさんの声。
 声がしたほうを見ると、ゲッテムさんとにらみ合っていた。
 エコーさんがゼノさんを抑えようと肩をつかみ、シーナさんが静かにそれを見ている。
 
 
「いいぜゼノ、来いよ! オマエとなら、それなりに楽しめそうだからなぁ!」
 
「ゼノっ、落ち着いてって! ちょっと、メルフォンシーナ!
あなたもそっちの凶暴馬鹿を止めなさいよ!」
 
「……誰のことを指しているのか、私にはわかりかねます」
 
 
 えっ、ちょっと、ケンカ? しかもゲッテムさんと?
 なんで、わからない。でも、危ない、止めたほうがいいと思う!
 アタシは半ばパニックになりながら慌てて駆け寄る。
 
 
「ゼノさん、何――――ひゃぶ!!」
 
 
 駆け寄った、が、坂で足元が滑り転んでしまう。
 そのまま顔が地面に激突する。いたい。
 起き上がることはできるんだけど、ちょっといまゲッテムさんの顔見るのコワイなあ……。
 恐る恐る、顔を上げる。
 
 
「……チッ、気勢がそがれた。間の悪いヤツめ。
まぁいい、機会はいつでもあるからな……じゃあなァ、ゼノ。
甘ちゃんは甘ちゃんらしく、群れてピーピー慰めあってな!」
 
 
 ゲッテムさんはそう言い放って、立ち去ってしまう。
 シーナさんも軽く頭を下げてゲッテムさんの後を追った。
 アタシはやっと立ち上がり、ゼノさんの近くに歩み寄る。
 
 
「……ゼノ」
 
「大丈夫、大丈夫だ、エコー。悪いな、手間かけちまった。
シャルもすまねえな。かっこ悪い所見せちまった。
ま、俺の意外な一面だと思っててくれ、詳細については勘弁な」
 
「む、むぅ……」
 
 
 意外。確かに、ゼノさんとゲッテムさんがあんなふうにケンカをするような仲だったなんて。
 たぶん、前から知り合いだったってことよね? 知り合いじゃなきゃ、ケンカもしないと思うんだけど……
 
 
「……ちょっとばかし頭冷やしてくるわ。んじゃ、またな」
 
「あ、ちょっと、待ってよ! ごめんね、シャル! あたしはゼノ追いかけるから!」
 
「あっ、はーい、お気をつけてですー」
 
 
 その場から立ち去るゼノさんとエコーさんを見送る。
 
 ……一瞬ゼノさんの声にどきっとしたなんて言えないなあ……。
 その、びっくりじゃない感じで……どきっとしたなんて……。
 
 
 
 
「あ……シャル、よかった、無事みたいだ」
 
「マトイちゃん?」  
 
 マトイちゃんとお話をしようとメディカルセンターに立ち寄る。
 メディカルセンターの前に立っていたマトイちゃんが、アタシを見つけてこちらに駆けよってきた。
 なんだか不安げな顔をしている。
 
 
「マトイちゃん、どうかしたの?」
 
「うん……なんだろう、嫌な予感がしてて、会いたいなって思ってたから」
 
「むー? アタシは大丈夫よ」
 
 
 ちょっと戦闘したりはあったけど、もう日常茶飯事。
 でも、心配してもらえるなんてうれしいかも。
 アタシはマトイちゃんを落ち着かせようとマトイちゃんの頭を撫でた。
 
 
「へくしゅっ……シャル、なんか、ほこりっぽい?」
 
「はわっ!?」
 
 
 マトイちゃんにくしゃみをされて、アタシは慌てて手を引っ込めた。
 
 
「やだ、ごめんなさい、マトイちゃん。具合悪いのに……。
ううん、地下坑道に行ったからかしら」
 
「こうどう? どこの地下?」
 
「惑星リリーパの砂漠の地下よ。アタシも最近行けるようになったんだけど。
なんか、わからないことがいっぱいみたい。というか、いっぱいだったの」
 
「へぇ、わからないことや新しいものがたくさんあるんだね」
 
 
 マトイちゃんは楽しそうに笑う。
 うん、わからないこと、新しいものがあるということを知るのは楽しい。
 
 そうだ、地下坑道であったこと、お話ししようかしら……。
 それで、マトイちゃんの気がまぎれるかも……
 
 
「ああ、こんなところにいた!」
 
「あ、フィリアさん」
 
 
 フィリアさんが焦った様子でこちらに駆けよってくる。
 マトイちゃんはアタシの後ろに隠れてしまう。
 
 
「だめですよ、マトイちゃん! 勝手に出歩いちゃ!」
 
「……大丈夫。少し、頭が痛いだけ」
 
「え、それ大丈夫じゃない!」
 
「大丈夫……」
 
 
 なんだかすねたみたいなマトイちゃん。
 というか、また頭が痛いって……大丈夫なのかしら?
 前にもこんなことがあった。すぐには治らないものなのかしら。それとも、何か原因があるのかしら……?
 また頭を撫でようと思ったが、さっきくしゃみされたことを思い出して手を引っ込める。
 
 
「だめです、調子が悪いのは事実なんですから。さ、帰りますよ」
 
「……わかりました」
 
 
 マトイちゃんはいやいやといった感じでフィリアさんの手を取る。
 
 
「むぅ、ざんねんだけどお話はまた今度しましょ、マトイちゃん」
 
「うん……また今度ね」
 
 
 フィリアさんに手を引かれ、メディカルセンターに戻るマトイちゃん。
 
 ……本当に大丈夫かしら。
 今度会いに来たときは、元気だといいな。またいっぱい、お話しすること探してこよう。
 
 ……あとアタシは部屋に戻ったらちゃんと服とか髪とか洗おう……。リリーパから帰ってきたら念入りに洗おう……。
 アタシがマトイちゃんの具合悪くしたらダメだもんね……。
 
 
 
 
 
 
 
  あとがき
 手が勝手に主マトを描くんだ定期。
 アークスシップでの日常回です。久しぶりにギャグを描きたかったんです。
 ゼノさんとゲッテムさんの話は重要なとこかなと思って描きました。どっこいシャルはこのざまだよ!
 
 Q:ところでシャルは普段体を洗わないんですか? A:洗ってると思うが……?
 

 



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