アークスにはいろんな人がいる。
 大抵はお仕事中に出会ってお話することが多い。
 
 お話するのは好きだ。いろんなことを知ることができる。
 今まで知らなかった考え方を、世界を知ることができる。
 だから、お話して、お話を聞くことが好きなんだ。
 
 ……たまに、わからないお話をされて困ることもあるけど。
 
 
 
 
「まったく、フォースとは面倒だな!」
 
「……オーザさん……」
 
 
 緑色の髪をしたアークス、オーザさん。
 オーザさんは近接職のハンタークラスなんだけれど、すごくハンターをお勧めしてくる。
 それで、フォースの人が嫌い……らしい。
 
 
「ええっと……なにかあったの?」
 
「いや、戦闘中にフォースと出会ってそのまま共同戦線となったのだが……なんとも危なっかしい。
敵に誘導されているかのようにあちこちふらふらしていて、とても見ていられなかった」
 
「む、むぅ」
 
 
 オーザさんはいらだっているようだった。
 フォースの戦い方ってよくわからないんだけど……そういうものなのかしら。
 
 
「一撃の火力は認めざるを得ないが、それ以外の部分がおざなりすぎる。
やはり、ハンターがベストだ!」
 
「そ、そうなのかしら……」
 
 
 オーザさんには前にも何回かであったことがある。
 そのときには、『ダーカーとの戦いは体力勝負』とか、『フォースは肝心な時に息切れする』とか言ってたっけ……
 ハンターっていうクラスがすごく好きなのはわかるんだけど……
 
 
 
 
「……私、やっぱりハンターは嫌い」
 
 
 薄紫の髪のアークス、マールーちゃん。
 この人はフォースで、こっちはこっちでハンターの人が嫌いらしい。
 それで、この人はこの人でフォースをお勧めしてくる。
 みんな自分のクラスが好きなんだなあ。
 
 
「ええと、もしかして何かあった……?」
 
「この前、戦場で出会ってやむを得ず一緒に戦ったんだけど……あちこち動き回って、正直邪魔。
頼んでもいないのに壁になろうとするし……何がしたいんだかわからない」
 
 
 不機嫌そうな表情のマールーちゃん。
 なんというか、本当に嫌いなのね……。
 
 
「う、うぅん……」
 
「理解できないものは嫌い……だから、私はハンターが嫌い。
フォースが、一番いい」
 
 
 ……マールーちゃんいわく、「ハンターはうるさい」、「いちいち前に出て視界をさえぎったりする」、「何も考えずに突っ走る人が多くて理解不能」とか……ちょっといくつか意味が分からない言葉があったけど。
 あいしょうがわるい? ってやつなのかしら……
 
 
 
 
 アタシと同じ、レンジャークラスのアークスにも知ってる人がいる。
 いるんだけど……言ってること、正直よくわからない。
 
 
「ハンターやフォースの皆さんに言わせてみれば、レンジャーは火力が足りないと言われますねえ」
 
 
 キャストのリサさんはその『レンジャークラスの知ってる人』なのだが、言っていることがよくわからない。
 難しいっていうのともなんだか違う気がするんだけど……。言葉はわかるんだけど、なんか、なんだろう。
 
 銃がすごく好きだっていうのはわかるんだけど、その理由が「感触が残らない」、「敵が踊るように倒れていく」……だったかしら。
 言っている内容はわかるんだけど、それにうなずけるかというと……ちょっと、できない。
 あと、そういう話をしているときのリサさんは、少し怖い。笑顔なのに、いつも楽しそうに話すのに何でだろう。ふしぎなことがいっぱいだ。
 
 
「それはその通りなんですよう、銃はですねえ、一撃必殺とはいかないんですよねえ。
でも、それがいいんです。そうじゃないといけないんです」
 
「え、えーっと……な、なんで?」
 
「だってだって、敵は敵ですよ?」
 
 
 嬉しそうに話すリサさん。
 
 
「苦しんで苦しんで苦しんで苦しんでもらわないとだめじゃないですかあ。
だから、リサは銃が大好きですねえ。大きな敵も、小さな敵も、分け隔てなく苦しめられる銃が大好きです」
 
「そ、そうなの……?」
 
「ん、ドンビキですねえ。でも、リサの言っていること、そんなにおかしいことですかあ?」
 
 
 ……アタシは視線をそらす。
 おかしいことなのかどうかもわからない。
 苦しめるとかいうのが、わからないというか……うまく言葉にできないんだけど。
 
 ただ今回も思う。リサさん、怖い。
 
 
 
 
「……ま、クラスによってというかひとによって戦い方も方針も違うわな」
 
 
 ルクスくんが話す。
 
 
「ルクスくんはフォース、よね。そういう戦い方のほーしんってあるの?」
 
「んん……深く意識したことはないな。お前と一緒だとすごくお前が邪魔に見えるってこと以外特には。
お前必要以上に動き回るからものすごく邪魔。そんなに動く必要ないだろ」
 
「うぐ」
 
 
 ルクスくんはじとりとこちらをにらんでくる。
 アタシ、そんなに邪魔かしら……
 
 
「そういえば、お前はレンジャーだっけ」
 
「そうよー。それがどうかしたの?」
 
「いや、なんというか……特に深く考えてなさそうなお前がかあ、と思って……。
オレたちは第三世代だから、そもそもフォトン傾向は変えられるわけだけど……でもお前はクラス変えないで、基本レンジャーだろ? なんでだ?」
 
「ああ、んん……それはそうね」
 
 
 アタシたちは第三世代、というらしく、フォトン傾向を好きに変えることができる。だから、いろんなクラスの武器を扱うことができるのだ。
 だからアタシもその気になればハンターもフォースも不自由なくできるはず……だけど。
 
 
「ハンターは、近づかないとだめでしょ? その、敵に近づくのが怖くて……」
 
「……ビビリか。じゃあフォースは? ほとんど接敵しないぞ」
 
「テクニックがうまく扱えなくて……思ったような威力にならなかったり思ったように飛ばなかったり……」
 
「あぁー……お前本当よくアークスになれたよな……」
 
 
 ルクスくんの視線が刺さる。
 うう、たしかによく怒られたりしたけど!
 レンジャーが一番向いてるってわかるまで苦労したけど!
 
 
「とりあえず、レンジャーすることになったのは消去法ってわけか」
 
「た、確かにほかのがうまくできなかったっていうのもあるけど……
その、銃は触ったことあったから……ある程度勝手がわかったから……うん」
 
「うんって……どこでそんな機会があったんだ……いや、まあいいか」
 
 
 ルクスくんはため息をつく。
 うぅ、なんでこんな呆れたような反応をいつもされるのかしら。
 ちょっとむっとして、アタシは口を開く。
 
 
「ルクスくんだって完璧ってわけじゃないでしょー?」
 
「まあ、さすがにな。オレのフォトン傾向は攻撃に偏ってるから、打たれ弱いのはある。
でも自覚してるから敵の攻撃に当たりに行ったりはしないぞ。お前と違ってなっ!」
 
「アタシも当たりに行ってないわよう!?」
 
 
 ルクスくんははぁ? とつぶやいてアタシの頭を掴む。
 
 
「思いっきり敵に向かっていきながら何いってんだお前」
 
「あだだだだ、いたい、いたいいたいいたい! あたまつかむのやーだー!
わざとやってるわけじゃないのよぅー!?」
 
「アークス個人にもクラス自体にも一長一短がある。
それを把握して、他のアークスと協力なりして不利になるような状況を避ける必要がある……わけだけど、お前絶対できないよな」
 
「うーーー、決めつけとかひどいの!」
 
「じゃあ自分の弱点把握してんのかよ」
 
 
 ルクスくんに言われ、アタシは言葉に詰まる。
 弱点……多分いっぱいあるんだろうけど具体的にどのあたりかって言われると……
 ルクスくんはにや、と笑みを浮かべる。
 
 
「言えないじゃないか。他のアークスと組むときも迷惑かけるんじゃないぞ」
 
「む、むぅ……決めつけ……」
 
「決めつけたくなるほどお前がヘタレてるんだよ」
 
 
 ……確かに、アークスになったばかりだし能力も高いわけじゃないけど。
 ちゃんとこれでも頑張ってるのよぅ。
 
 
「ま、ヘタレなりに頑張れ」
 
「……ルクスくんもよくわかんないの。なんでいじわるなのよー!」
 
「別に普通だし、オレの性格なんてわかってもらわなくていいし?」
 
「なにそれえ!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  あとがき
  クラスのサブイベまわりです。初対面イベント飛ばした? 入れるタイミングがなかったんだ。
  クラス教官キャラみんな好きだよ。
  



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