フーリエちゃんに誘われて、アタシは惑星リリーパを訪れていた。
 
 
「シャルさん、今回もよろしくお願いします!
よし、よおっし! 今度こそあの子たちにお礼しますよー!」
 
 
 フーリエちゃんは今日も元気で、やる気十分といった感じだった。
 今まで何回か一緒に惑星リリーパを訪れていたが、あのちっちゃいこたち……リリーパ族を見かけることはできても話しかけることはできなかったらしい。
 
 
「フーリエちゃんすごいやるき……会ってお礼するための……サクセンとか、なにか考えてるの?」
 
「そんなものありません! 当たって砕けろというやつです。
私、あんまり頭もよくないですし、考えていてもだめだと思うんですよね!
とにかく、思うがままにやるだけやってみてから考える!」
 
 
 ルクスくんが聞いたら怒りそうだ……。
 でも、そういう考えのひともいるのね。
 
 
「これはこれでキャストっぽくない考えですけど……それが私かな、と」
 
「キャストっぽくない、の? ……わかんないけど、フーリエちゃんがそれでいいならいいと思うわ、うん!
アタシもがんばるわ、行きましょう、フーリエちゃん!」
 
「はい! 今日はどこから探していきますか?」
 
「とりあえず、あっちから探してみましょ」
 
 
 アタシたちは歩き出す。
 ここのところ何度もリリーパには来たから、砂漠を歩くのにも慣れてきた。
 
 二人で歩いていたら、フーリエちゃんがいきなり立ち止まる。
 
 
「……あ、そういえば! 私、任務記録つけるの忘れてました!」
 
 
 フーリエちゃんは慌てて端末を開き、記録に記入を始める。
 それを見て、アタシも記録を忘れていたことを思い出す。記録しないと怒られちゃう……!
 
 
「えっと、シャルさんっ! 今って何時ですか?」
 
「え、えっと、11:00!」
 
「ありがとうございます! ……ふう、お騒がせしました。
気を取り直して、行きましょう!」
 
「う、うん! ……はわあ、待ってー!」
 
 
 アタシも記録を書き終え、先に歩いていくフーリエちゃんを追いかける。
 
 
 砂漠を歩く。
 砂漠は機甲種以外にもダーカーも多くいる。わかってはいたけど、本当どこにでもいるのね……
 放っておくわけにもいかないので、フーリエちゃんと一緒に倒しながら進んでいく。
 フーリエちゃんはランチャーを得意とするレンジャーらしい。
 
 しばらく歩いていたら、アタシは地面にみょうな跡があるのに気付く。
 アタシはしゃがみこみ、それを覗き込む。フーリエさんも一緒に覗き込んでくる。
 
 
「……んむ、なあにこれ?」
 
「これは……何か引きずった跡、かな?
小さな足跡もあるし、あの子たちの痕跡みたいですね」
 
「足跡……じゃあ、このあたりにいたんだ……」
 
「そのようです。でも、慌てて逃げたように見えますね。
何もしてないはずなのに……もうこのあたりにいなかったりするのかなあ。
出てきてくれないのかな……」
 
 
 少し不安げな表情になるフーリエさん。
 しかし、フーリエさんはふるふると首を振り、顔を上げる。
 
 
「ううん、弱気はダメでした! 諦めないって決めたんです!
シャルさん、ごめんなさい。もう少しだけ付き合ってください」
 
「もちろんなの! アタシもあの子達に会いたいわ!」
 
 
 
 
 
 先に進むと、辺りには機甲種の残骸がいくつも転がっていた。
 中には煙を上げているものもあるから、壊されてそんなに経っているわけでもなさそうだ。
 
 
「これ、誰がやったんでしょう……」
 
「ダーカー……って、モノ壊したりするかしら?」
 
「いえ、ダーカーは基本的に浸食するはずですから破壊行為は……あっ、いた、いましたよ!」
 
 
 フーリエちゃんが声を上げ、岩陰を指さす。
 そこにいたのは前に見かけたリリーパ族。
 なにやら震えているように見える。……もしかして、アタシたちにおびえてる?
 でも、まだアタシたちは何もしていないのに……
 
 
「あの、すみません! 私、あなたたちにお礼がしたくて……!」
 
 
 フーリエちゃんが声を張り上げ駆け寄ろうとするが、その前にリリーパ族は逃げ出してしまう。
 
 
「あっ、待ってください! 話を……!」
 
 
 フーリエちゃんは慌てて追いかける。
 しかしリリーパ族はそのまま小さな穴に入り込んでしまった。
 あんな所、入れないから調べることもできない。
 
 ……さっきのこと……リリーパ族が震えてたこと、伝えたほうがいいかしら。
 フーリエちゃんのせいじゃないということはアタシもわかってる。
 ……うん、話そう。わからないままよりは、いいはずだ。
 
 
「フーリエちゃん、あの、さっきの子たち、震えてるみたいだったわ」
 
「え……本当ですか?」
 
 
 アタシはうなずく。
 これでも視力にはちょっと自信がある。たしかに震えているのが見えた。
 フーリエちゃんはそれを聞いてうつむく。
 
 
「……確かに、何かにおびえてる感じはしてましたけど。怖くて、逃げたんですね。
私、怖がらせるつもりなんてないのに。どうしてだろう、どうすればいいんだろう……」
 
 
 落ち込むフーリエちゃん。
 
 わかってる。フーリエちゃんは、あの子たちにお礼を伝えたいだけ。怖がらせようなんてしてない。
 でも、なんであの子たちは怯えてたのかしら。
 理由、何だったんだろう……
 
 
「……すみません、へこんでいる場合じゃありませんね。
探索はいったん終わりです。帰りましょう、シャルさん」
 
「う、うん……」
 
「大丈夫です、私はまだまだ諦めませんから」
 
 
 フーリエちゃんはそう言って笑う。
 
 ……やっぱり、ちゃんと会わせてあげたいわ。
 もう一回したら、もしかして、やり直せるかしら……?
 
 
 
 
 気になることは、いくつかある。アタシにだって、わかること。
 あの機甲種の残骸、何だったんだろうって。
 フーリエちゃんと砂漠を探索するより少し前の日に巻き戻り、砂漠を探索する。
 
 ……っていうのはわかるんだけど、どうやって調べればいいんだろう。
 とりあえず砂漠には来たんだけど、何も見つからない。
 
 
「お、こんなあっついところまでごくろうさま」
 
「あ、クロトさん」
 
 
 話しかけられ振り向くと、そこにはクロトさんがいた。
 
 
「君は探索かな?」
 
「うん、そう。ちょっと調べたいことがあって」
 
「そっかあ、でもまあ、見ての通りここには何もないみたいだよ。というか、何もなくなっちゃった。
誰かが暴れまわったんだろうね。跡形もなく破壊された機械とかひどいもんだよ、まったく」
 
 
 ……破壊された機械。
 そういえば、『前』にも見た。壊れた機甲種の残骸……同じ原因なのかしら。
 
 
「ま、律義に朝早く暴れてくれてるのが唯一の救いってところかな」
 
「……んむ? 朝早く、なの?」
 
「こんな時間に来て残骸だらけってことは、朝に破壊活動が行われてるって考えるのが自然じゃない? そんなに時間がたってるわけでもなさそうだし」
 
 
 ああ、それもそっか。
 今はお昼近いから、それよりも前に誰かが暴れてるってわけなのね。
 そういえば前に見たときも煙がもくもくしてたわね……
 
 
「ここに朝一で来たりしたら、どこかの誰かの大あばれに巻き込まれちゃうかもよ?
ま、お互いに気をつけようって話。それじゃあね」
 
 
 クロトさんはそう言って立ち去って行ってしまった。
 アタシはそれを見送る。
 
 
 ……巻き込まれるかもしれない。でも、それで本当のことがわかるかもしれない。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  あとがき
 引き続きフーリエちゃん回です。
 とはいえ一周目なのでなんの成果も得られていないいつもの。
 実はこのへんからマタボ廃止等のごたごたで執筆作業の予定がいろいろひっくりかえっていひーこらいっています。
 



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