「シャルさん、先日はありがとうございました。
おかげさまで怪我も完治、いつでもどこでも行けますよ!」
「わ、よかったの!」
数日後、フーリエさんに会いに行くとフーリエさんはすっかり元気になっていた。
「それで、ですね……シャルさんに折り入ってお願いがあります。
私と一緒に砂漠に行ってくれませんか?」
「んむ、もちろん!
……だけど、なんというか……本当にアタシも行っていいのかしら。
邪魔に、ならない?」
「いえ、私は、私の見たものに自信がなくて……誰かと一緒に行きたいんです。
だから、お願いします。シャルさんのお暇なときでかまいませんので!」
フーリエさんはそう言って頭を下げた。
なんというか、すっごく丁寧ね……。アタシも見習わないとかしら?
フーリエさんと話し終わった後、アタシはショップエリアを散歩する。
「あー、どうしよう、どうしよう……!」
「……んむ?」
ふと、なにか悩んでいるらしい人を見つける。
どうしたんだろうと思い近づくと、その人は顔を上げてこちらに駆けよってくる。
「すいませんっ、そこのあなた! その服装、アークスですよね!?」
「ふぇっ、うん、そうだけど……あなたは? 何か困ってるみたいだったけど」
「あ、申し遅れましたっ。僕はライト。アキ博士の助手をやっています」
ライトくんが名乗る。
じょしゅって、お手伝いする人のことだったかしら。アキさんって博士さんの助手さん……あれ?
アタシはちらりと辺りを見るが、博士さんらしき人は見当たらない。
「ライトくんね、うん、よろしくね。アタシはシャル。
えっと……それで、アキ博士ってひとは、どこか別のとこにいるの?」
「それなんですよ、それっ! うちの先生、最近アムドゥスキアの龍族にご執心でして……
アークスの資格を持ってるのをいいことに、お一人で行かれちゃったみたいなんですよ!」
アムドゥスキアというと、火山だらけの惑星だ。
龍族っていう種族が暮らしてる。
ライトくんは不安そうに心配だなあ心配だなあとつぶやく。
……たしかに、一人って不安になるわよね。うん。
「じゃあアタシが探してくるわ!」
「本当ですか!? ありがとうございます、よろしくお願いします!」
早速アタシはアムドゥスキアの火山洞窟を訪れる。
火山洞窟はいろんなところにマグマが流れてて、ちょっとあぶなくてこわい。
アキ博士がどこかにいるはずだけど……あたりを見回しながら歩く。
歩いていると、黒髪のアークスを見つける。
周りを観察しているようだけど……もしかして、アキ博士なのかしら。
アタシはその人に駆け寄ってみる。
「あ、あのぅ……」
「んん? なんだいキミは。キミが龍族じゃないなら私はキミに用はないぞ」
う、アタシは龍族じゃないけど。アークスだけど。
その人はそれだけ言ってまた歩いていこうとする。
あっ、こんなところで見失ったらまた探すのが大変になっちゃう!
「わ、わわっ、行かないでっ! その、アキ博士ですか!?」
「? いきなり自己同一性への問いかけとは、なかなか面白いな、キミ」
アキさんはやっと足を止める。
……じこどーいつせーって、何かしら。聞いたことがない言葉だわ……。
「まあ、お察しの通り。私はアキだ。
だがキミは誰だ? 私の記憶にはないし、間違いはないぞ」
「えっと、記憶にはないと思います……多分、はじめましてなので……えっと、依頼されてアキさんを探してきたんですけど……」
「ん……ああ、いや。皆まで言わずとも理由はわかった。
ライト君からの依頼できたんだな」
そうだろう?と確認してくるアキさん。アタシはこくこくとうなずいた。
はわ、わかっちゃうんだ。すごいなあ……
「私の捜索を目的として来るなんて、彼からの依頼以外では考えられない。
どうせ、私が戻ってこないと言ってぴーぴーわめいていたんだろう? 万が一などありはしないのに……」
「ぴーぴー……えっと、その、すごく心配してたみたいですよ?」
「まったく……まあ、仕方がない。
こうしてキミに見つかったのだから、ここは素直に私が折れることにしよう」
よかった、コレで依頼完了だー。
もしもいやだとか言われたらどうすればいいんだろうと思わず考えてしまうところだった。
「ああ、すまない。よければキミの名前、教えてくれるかな」
「んむ? ……えと、シャルです。シャル・バンボロット」
「シャルね……なるほど、キミは龍族よりはるかに興味深い存在かもしれないね」
ぼそり、アキさんが呟く。
「……えっと、どういう意味、です?」
「いや、独り言だ。忘れて構わない。君の名前、覚えておくよ。それじゃあね」
アキさんはそう言って立ち去っていった。
これでアキさんを探す依頼は終わりだろう。
ついでにアタシもすこし火山洞窟を探検していこうかしら。すこしくらいなら怒られないわよね?
火山洞窟は外の光が入ってこないから暗いが、マグマが光っているので場所によってはまぶしいくらいだ。
こんな場所、本でも見たことがない。なんだかきれいだなとも思える。
やっぱり、外に出てくることができてよかった。
危ないことはあるけど、それでもやっぱり、外の世界が好きだ。
アークスになって、よかっ……
「……うわ」
目の前に、いきなりダーカーが現れる。
そうだった、アムドゥスキアはナベリウスに比べてなぜかダーカーが多いんだった。
さすがに囲まれるときついかな……ランチャーなら広範囲を攻撃できると言っても、それにしたって限りがあるし。
まだ数は少ないし、倒しきれるはず……
そう思ったとき、いきなりどこからか巨大な影……白い龍のようだった……が飛んでくる。
え、どこから出てきたの……!? ダーカーには見えないけれど、何もないところから出てくるなんてダーカーみたいだ。
龍はブラックホールのようなものを出現させる。
するとその中にダーカーたちが吸い込まれていく。
白い龍は吸い寄せられたダーカーにかぶりつく。噛みついて攻撃してるとかじゃなく、食べてる。
アタシは腰が抜けてしまい、その場に座り込む。
白い龍はダーカーを食べ終わるとアタシをちらりと見て、どこかに飛び去って行ってしまった。
「……なんなのよぉ……」
次の日、アタシはフーリエさんと一緒に、リリーパの砂漠を訪れていた。
二人で砂漠を歩き回り、小さな影を探す。
「あ、シャルさん、あそこ! あれ、見てください!」
「んむっ?」
フーリエさんが声を上げる。
フーリエさんが指さす先には、歩いていく生き物がいた。耳の長い、モフモフしてそうな生き物だ。
「あ、あれ? あの子がそうなの? アタシも見れたわ!」
「見ました? 見えました? 今度こそ間違いないですよね!
わたしのメモリーやカメラの故障じゃない……間違いなく、そこにいたんですよね!」
「うん、確かに見たわっ。あの子がフーリエさんを助けてくれたのね」
「はい! ……よかった、シャルさんも見たのなら、間違いないです。
ちっちゃな影さん……ううん、小さな人というのが正しい見た目でしたね」
嬉しそうに話すフーリエさん。
たしかに、ちゃんと姿も見たわけだし……影、とは言えないだろう。
顔を上げてさっきあの子がいたところを見直すが、姿が消えていた。話している間に、どこかに行っちゃったのだろうか。
「あの子、行っちゃったけど……むぅ、追いかける?」
「……いえ、いいです。じっくりやっていきますから。
今はとりあえず、いるってことがわかっただけで十分です」
フーリエさんはぐっ、と拳を握る。
「ここからは根気とやる気の勝負です! 私、その二つだけは自身がありますからね!
シャルさん、ありがとうございます!」
「ふふ、よかったわ。これからもお手伝いできることがあったらお手伝いさせて!」
「はい、よろしくお願いします!」
あとがき
イベント詰め込みすぎやんなー☆
発生する日時が近いのでというのと、尺の都合で竜の病のイベントなどもつっこみました。後で混乱しても知らんぞわたし。
あと本当は発生する場所が違うイベントも混じってますが、見逃してください。
本編自体はこのままリリーパ関連イベントがメインで続行です。リリーパ族可愛いよリリーパ族。
龍族周りについてはもうちょっとだけお待ちください。
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