凍土を進む。
 
 歩いていたら、きぃん、とまた音がしてアタシはは立ち止まった。
 
 
「また、音……?」
 
『またですか? やはりこちらでは検出されていませんが……
あ、あぁっ! シャルさん、あれ見てください!』
 
 
 ロジオさんがいきなり大きな声を上げる。顔を上げると、そこには氷。
 よく見ると、中に何か埋まっているようだ。
 
 
「はわ……何かはいってる?」
 
『なんでしょうかこれ……人工物みたいですね。
アークスの残留物にしては不自然な気がしますが……』
 
「……んむぅ、とりあえず出してみるわ」
 
 
 埋まっていたものが壊れないように氷を砕き、それをとりだす。
 それはなんというか、よくわからない形をしていた。
 棒状で……白くきらきら光っている。
 
 
「ロジオさん、これ何かわかるかしら?」
 
『パラメータ的には武器でしょうか?
それにしては形がおかしい……壊れてるのかな』
 
 
 武器……壊れてるから、変な形をしているのかしら。
 誰かの落とし物かもしれないし、ここに置いておくわけにはいかないわよね……
 
 そう考えていた時。
 何か、ぞわりと嫌な感じがした。アタシは顔を上げる。
 
 すると、視線の先に……仮面で顔を覆った人物が立っていた。
 あの、ナベリウスで出会った……
 まずい、と思うや否や、その人は剣を構えて飛びかかってきた。
 アタシはすんでのところで飛びのき、攻撃をよける。
 
 
『シャルさん、大丈夫ですか! あの人は……?』
 
「わかんない、わかんないわよぅ……!」
 
 
 なんとかわかることは、アタシに敵意を持っているってこと。
 それがなんでかは、わからないけれど。でも、考える余裕は今はない!
 
 
「……それを離せ……」
 
 
 仮面の人物は再び武器を構え、こちらに駆けてくる。
 どうしよう、どう動けばいいかわからない……!
 足が、動かない。動かせない!
 
 しかし、いきなり目の前に誰かが飛び込んでくる。
 ぎぃん、という武器がぶつかる音。
 
 
「……っと、危ないところだったな、シャル!」
 
「え、はわっ、ゼノさん!?」
 
 
 飛び込んできたのは、ゼノさんだった。
 あとからエコーさんもかけてくる。
 
 
「大丈夫、ゼノ、シャル!? ……その人、アークスなの?」
 
「そういうの調べるのはお前の役割だろ、エコー」
 
「あ、ええっと……全件検索、完了。該当データなし……
なしってどういうこと!?」
 
 
 端末を操作しながら焦るエコーさん。
 やっぱり……前に出会ったメルフォンシーナちゃんが調べていた時もそんなことを言っていた。
 この人はアークスではない。じゃあ何者かっていうのは、やっぱりわからないけど……
 
 ゼノさんは仮面の人物を見据える。
 
 
「おい、お前。どこのどいつだ。所属を言え」
 
「……」
 
 
 仮面の人物は何も答えない。
 
 
「ちぇっ、無視かよ! スカした仮面してやがるし、なんだかいけ好かん奴だな、お前」
 
「……邪魔をするなら、殺す……」
 
「……退く気はなさそうだな。なら、力づくでもご退場願うぜ」
 
 
 ゼノさんは武器を構える。
 アタシは武器の破片をしまい、ライフルを構えて前に出る。
 
 
「アタシもお手伝いしますっ、ゼノさん!」
 
「わかった。無理はするなよ」
 
「ふたりっとも危なっかしいなあ……!
サポートはするけど、気を付けてよね!」
 
 
 仮面の人物がこちらに走ってきて、斬りかかってくる。
 ゼノさんは剣でそれを受け止め、振り払った。
 アタシは散弾を放つ。相手は弾を剣で受け止め、こちらに駆けてくる。
 やばい、と思い何発も撃つが、当たっているのにひるむ様子はない。
 アタシに向かって斬りかかって来るのを、慌てて転がり込んでかわした。
 
 そこに、ばちりと稲光が走る。エコーさんの放った雷の法撃だ。一瞬、仮面の人物の足が止まる。
 そこにゼノさんが駆けて剣を振り上げ斬ったが、仮面の人物はそれを受け流し一歩下がった。
 
 仮面の人物が剣を大きく引いた直後、大きく振る。
 剣から放たれた斬撃がこちらに飛んでくる。アタシはそれをよけきれない。
 武器ごと受け止めるが、衝撃で吹き飛ばされる。アタシはゴロゴロと地面を転がった。
 起き上がりライフルを構え直す……が、銃身には穴みたいな大きい傷がついていた。ちょっと、もしかしなくても今の攻撃で壊れた!?
 
 
「シャル、だいじょうぶ!?」
 
「だ、大丈夫です!」
 
「エコー、回復頼む。こっちは任せとけ!」
 
 
 エコーさんがアタシに駆け寄り、回復テクニックをかけてくれる。
 身体の痛みがひいてきて、これでだいぶ動けそうだ。
 
 ゼノさんは仮面の人物に向かって駆けていき、剣を振り下ろす。
 仮面の人物はそれを件で受け止めた。剣がぶつかる音が響く。
 アタシも加勢しなきゃ……!
 
 そう思った時、きぃんとまた音が鳴った。もしかして、さっきの武器……?
 取り出して手に取ると、淡く光を放っていた。
 なんで、いきなり……そう思っていたら、仮面の人物がこちらを向く。
 
 
「隙ありっ!!」
 
 
 ゼノさんが駆け、大きく剣を振りかぶる。
 仮面の人物は飛びのいてそれをよける。しかし、よけきれなかったのか自身の顔を覆う仮面を押さえた。
 ぱらり、と仮面の欠片が落ちる。
 
 
「ちっ……」
 
「おいおい、業物がいかれちまったよ。
だけどまあ、おあいこってところか?」
 
 
 仮面の人物は、こちらを睨みつけてくる。
 
 
「く……シャルっ!」
 
 
 そしてそれだけ吐き捨て、飛び去って行ってしまった。
 ゼノさんがふう、と息を吐く。
 
 
「とんでもない奴だったな……シャル、大丈夫か?」
 
「はわ……大丈夫です、ありがとうございます、ゼノさんっ!」
 
「どーいたしまして。しかし、よくもまあ探索後のその状態で戦ったもんだぜ。頑張ったな」
 
 
 そう言って笑うゼノさん。
 わ、わわ、褒められた。ゼノさんに褒められた〜っ!
 すごくうれしくて飛び上がりそうになる。
 
 
「それで、あの仮面野郎が狙ってたのは、お前の持ってるそのガラクタか?」
 
「あ、はい。たぶん……そうだ、ゼノさん、エコーさん。
さっき、キーンって音が鳴ったんですけど、聞こえませんでしたか?」
 
 
 アタシは恐る恐る尋ねるが、ゼノさんとエコーさんは首をかしげた。
 
 
「そんなもん鳴ってたか……?」
 
「あたしも聞いてないけど……」
 
『私の取得したデータにも、そのような音声情報はありません』
 
「ロジオさんも……そうよね。ううん、何の音だったのかしら……」
 
 
 手に持った武器の欠片を見つめる。
 これがなんでここにあったのかとか、何なのかとか、まだ何もわからない。
 ……どうすればいいのかも、今のアタシには思い浮かばない。
 
 
「まあ、考えることはロビーでもできるだろ。早いとこ帰ろうぜ?
学者さんよ、あんたのほしかったデータってやつも集まっただろ?」
 
『はい。そちらは十分に取れています。
……ですが、なぜシャルさんの依頼内容をご存じなのですか?』
 
 
 ロジオさんに尋ねられ、ゼノさんは頭をかく。
 そういえば、ゼノさんにそんなことはお話ししてなかったはず。
 
 
「あー、先輩ってのはな、後輩のやることなすこと全部把握してるんだよ」
 
「え、はわ、何ですかそれ! ゼノさんってばすごい!」
 
「シャル、違うから。あたしが調べたってだけだから」
 
「いきなりばらすなっての! ああもう、ほら、さっさと帰るぞ!」
 
 
 ゼノさんが先に歩いていく。
 アタシとエコーさんもそれを追いかけた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  あとがき
  ペ〜〜〜〜〜;;;;
  戦闘描写本当苦労しました。僕の描写能力的にもシャルの語彙的にも。
  ゲーム中ではありえない武器が壊れる描写がありますが、ハンター用武器じゃない武器で攻撃受け止めるとかアホなことして壊れないわけがないのでこれでいいんですハイ。
  そしてこれを描きながらつくづくゼノエコいいなあと思うのです。
  



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