ロジオさんから頼まれたナベリウスの調査。
それからしばらく経った後ロジオさんに会いに行ったら、また調査を頼まれることになった。
今度は、森林の先の、凍土の調査。
なんでも温暖な森林からいきなり凍土になっているっていうのは、おかしいらしい。
でも詳細なデータはなくて、隠そうとしているみたいだって。
そういうわけで、今度はナベリウスの凍土に向かう。
「ひゃ……寒い」
森林は暖かかったのに、いきなり寒くなる。
目の前は真っ白。これ、全部雪なんだ。足元もサクサクと不思議な感触だ。
「ロジオさん、凍土ついたわ!」
『はい、こちらでも確認しています。
ポイントはまだ先なので、進んでください。道が険しいのでお気をつけて』
「はーい」
確かに森林に比べると、ただでさえ雪があって歩きづらいのに起伏が激しい。
足を取られないようにしないと。
そうおもいながらアタシは進む。
「……あら?」
ふと見上げると、ダーカーが数体いた。
慌てて岩陰に隠れるが、向こうはこちらを気にも留めない。
ダーカーたちはあたりを少し徘徊した後、どこかへ向かってしまう。
『……今のデータは、ダーカーですか?
アークスを見つけたら襲ってくると資料にはあるのですが……』
「隠れてたから気づかなかったのかしら……でもあれだけ調べられて気づかないっていうのもおかしいかあ」
『うーん、何かを探していたんでしょうか……でも、そんな行動パターン、今まで報告されたためしがないのに』
「ダーカーは普通ああいうことしないってこと?」
アタシがたずねると、そうですね、とロジオさんが答えてくれる。
普段しない行動されると、なんというか困るわね……
『……なんだか不気味です。おせっかいかもしれませんが、十分注意して進んでください』
あたりを警戒しつつ、凍土を歩く。
こちら側にダーカーはいないらしく、原生種の姿しか見えない。
原生種も森林にいるものとは色とかが違う。全く別物っていうわけでもなさそうだけれど。
なんだかおもしろいわね……
『そのあたりの地質はデータの収集に最適なようですよ』
「んむ、この辺ですればいいの?」
『ああ、もう少し先です。機材の手配はすでに依頼済みなので、先に進めばあると思います』
「はーい……んむ?」
視界に、巨大な影。
顔を上げると、そこには巨大なイエーデ。
道をふさぐように、そこに立っていた。
『キングイエーデ!? このエリアはもしや、イエーデの縄張り!?』
「え、えぇ……あんなのいるのに採取できるのぉ!?」
『困難かもしれません。ですが、データ収集をあきらめるわけにも……
シャルさん、この場は何としてでも切り抜けてください!』
切り抜けろって言われても!
しかし周りを見渡しても崖に囲まれていて通れそうな道はない。
本当にやるしかなさそう……アタシはライフルを構える。
動きは遅いからとらえるのはそう難しくなさそうだ。
アタシはライフルに弾丸を装填し、キングイエーデの頭部を狙い撃つ。
放たれた弾丸がキングイエーデの顔に当たり、爆発する……が、キングイエーデがひるむ様子はない。
さすがに打たれ強い。でも、いっぱい撃てば倒れるわよね……たぶん。
キングイエーデが、こちらに向かって腕を振り回してくる。
かわそうとしたが、間に合わない。思いきり殴られ、吹き飛ばされる。
雪の上を転がる。殴られたのはかなり痛かったが、幸いにも雪は柔らかかった。普通の地面だったらもう少し痛かったと思う。
こうなったら、とアタシは立ち上がりランチャーを担いだ。
「めんどくさいのっ! 吹き飛んじゃえ―っ!!」
グレネード弾を装填し、キングイエーデのほうに撃ち込む。視界の端で何か吹き飛んだが、気にしない!
やっぱりキングイエーデはひるんだようすはないけど、もう一発撃ち込めば……と思った時。
目の前に、巨大な氷の塊が飛んでくる。
アタシはあわててしゃがみこむ。氷の塊はアタシの頭上を通り過ぎ、背後で地面に落ちて砕けた。
……いまの、アタシの背より大きかったんだけど……
キングイエーデの様子を見ると、何か怒っているようだった。
攻撃して怒ったのかしら……どうしようと周囲を見渡すと、倒れたイエーデがいた。
……もしかして怒ったの、ほかのイエーデを巻き込んだせい、かしら……
キングイエーデがこちらに向かって殴りかかってくる。
アタシはそれをかわしながら、何とか弾を撃ち込む。
さっきより攻撃が早くてよけるのがたいへんだけど、たぶん当たったら当たったで大ダメージだ。
大きく振り回される腕を飛びのいてよける。
そして、キングイエーデの顔に狙いをつけて、3発、連続で撃ち込んだ。
狙い通り、全弾顔に命中。キングイエーデの体がゆらりと揺れる。
そしてキングイエーデはそのまま、ドスンと音を立てて地面に倒れてしまった。
アタシはほっとして、肩をなでおろす。
「……たおせたぁ、よかったあ……」
『キングイエーデは何とかなりましたね……このあたりなら収集場所として申し分ないと思います。
お手数ですが、指示する各所のデータを収集してもらえますか?』
「うん、任せてっ」
ロジオさんの指示に従い、ポイントに向かう。
ポイントには採掘機が設置されていた。これがロジオさんが頼んでくれたという機材なんだろう。
今までアークスのお仕事してるときにも採掘の依頼をされることはあったから、これの使い方はわかってる。
……うまく扱えるかっていわれると、ちょっと、うん。
壊したことはないから、大丈夫だもん……。
採掘機を操作し、サンプルを回収する。
いくつか設置された採掘機から、ロジオさんに指定された分を集めることができた。
『シャルさん、聞こえますか?』
「聞こえてるわ! 集まったかしら?」
『はい、一通り集まりました。ありがとうございます。
……とはいえ、途中に現れたダーカーについては一切不明です。
動向を探っても見たいですが、情報がなければ危険ですし、無理はよくありませんよね……』
ロジオさんが困ったように話す。
情報……情報があれば、ダーカーを追っても大丈夫なのだろうか。
『何とも気持ち悪いですが……まず、何事もなく調査が終わったので良しとしましょう。
なにより、シャルさんが無事でよかったです』
「えへへ、ありがとうなの。それじゃあまた今度お話聞きに行くわね。
とりあえず今は帰還しまーすっ」
アタシはそう告げて一度通信を切る。
もうすこし凍土を見ていきたい気もするけど、危ないかもだし、今は帰ろう……
そう考え、その場を去ろうと思った直後。
なにか、視線を感じた。
慌てて辺りを見回す。
でも、何かがいるようには見えない。
……やっぱり、長居は危険だ。帰ろう。いろいろなことは帰ってから考えよう。
後日。
アタシは改めてナベリウスに来ていた。
いろいろ考えていたのだけど……考えても何も浮かばなかったのだ。
部屋でいろいろ考えてたら、ルクスくんにものすごく蹴られるし。
とりあえず、前通ったルートと同じルートを歩いてみよう。
そう思い、ナベリウスの森林を歩く。
気になるのは確か、ダーカーの動きだっけ。何か探しているみたいなダーカーたち。
何を探していたのかしら。もしこのまま進んでであったら……まあ、その時はその時だ。
とりあえず今は進もう! 後のことはあとで考える!
と、歩を進めていたその時。
「……質問があります。答えてもらえますよね」
いきなり、声。アタシは慌てて辺りを見回す。
どこから聞こえた声かわからない。しかし、あたりを見回してもそれらしき姿はない。
「……? どこに……」
つぶやきかけた瞬間、後ろでひゅん、と何か音がした。
慌てて振り向くと、いつの間にかそこには武器の切っ先をこちらに構えた人物がいた。
青い髪をツインテールにした人。青い刃を向け、こちらを見据えてきている。
「う、ひぇっ!?」
「……頻発している暴走龍の乱入。ご存知ですよね」
暴走龍?
知らない単語だ。どうこたえるべきかわからなくて口をパクパクさせていたら、その人はそのまま話を続けた。
「その居場所について……特に、その中でも強い個体について、何か知りませんか?」
「なに、それ……なんもわかんない、わよぅ……!」
何とか声を出し、答える。
するとその人は眉を顰めつつ、武器を下した。
「……そう、ですか。
無礼をわびます。今あったことは気にせずに探索を続けてください。では」
そう言い、その人はどこかへ歩いていく。
……だが、その姿は空気に溶けるように消えてしまった。
……何だったのかしら、今の人。
どこからともなくあらわれたり、不思議な人……アークスなのかしら。
でも姿を消したり現したりなんて、そんなこと簡単にできるっけ?
考えつつ、先に向かう。
凍土にたどり着き、一通り探索する。
しかし、ダーカーは見当たらず、平穏に見える。
……なにも、起きてない? それとも、もう起きた後?
もし、起きた後だとしたら……
「……もう一回、確かめないといけないかもしれない……?」
あとがき
不気味なナベリウスAルートとか。
戦闘描写、嫌い……(´;ω;`)
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